ホッと一息の樹 titled by おたかさん
[別冊]ホ ッ と 一 息 の 樹(記)

ホッと一息の樹」から抜粋したものを[別冊]としてまとめています。
初出:2000/04/14(金)
初めての告白

お互い20代半ばで始まった妻との「交際」と言えない交際が5年あまり続き、2人はいつのまにか30を過ぎていた。
私は彼女と会ったときから、「結婚するとしたら、この女性しかいない」と思い込んでいた。理由は分らない。「お似合い」とか「つりあい」とかからは、完全にかけ離れた2人だ。そのこともよく分っていたが、それが私の「予感」を打ち消すことは決してなかった。
しかし、彼女が私をどう思っているのかは謎のままだった。
彼女から「会いたい」と言ってくることはまずなかった。が、私が「会いたい」と電話で申し込めば、気乗りしない返事ながらも、約束の時間に大幅に遅れはするものの、会ってくれてはいた。
そして、最初はつまんなそうな顔でいやいや付き合っているという風情なのが、やがて色々なことを話し出す。最初に決めていた時刻を過ぎて、私か彼女が仕事に戻らなくてはならない時間になっても、あるいは、とっぷりと夜がふけても、話が終わらない。
こっちが心配になって「もう帰らなくていいの」と聞くと、「そうね」と言いながら、また、いろいろなことを話す。
ここで書く妻の「武勇談」の大半は、そのときに聞いたものだ。
これだけ話してくれたのだから、次に会う時はもっと気軽に応じてくれるだろうと期待して電話すると、「なんで会うの? このまえ会ったばっかりじゃない」とくる。
彼女が他の男性と付き合っているのか、それも知らなかった。そういうことを聞く勇気はなかったし、もちろん彼女を拘束するどんな権利も私にはなかった。
しかし、いつかどこかで、彼女に自分の思いをはっきりと伝えるべきだと決心した。
そして私はある夜、彼女に電話した。面と向かってはとても言えないと分っていたから。
「はい。なに?」私に対するときのいつもの彼女の声。無関心で平板な声。
「今まで、言おうと、思って、言え、なかったけど、きょう、決心して、言います」
「だから、なに」こっちが、ここまで緊張しとんのに、どこまで冷めきっとんのや。
「・・・・私は」緊張の極致「・・・・あなたを」死にそう「・・・・愛しています」!!
ついに言うてもた。どうしよう。ドキン、ドキン・・・・
皆さん。そのあと、妻がどう言ったと思いますか? あなたが「愛してます」と本気で異性から打ち明けられたら、どんな返事をしますか?
「知ってます」すっごいフツーの声だった。何をいまさらという声。
?! ??? !!!!!!!! 私の頭の中は真っ白になった。
「イヤなのよね。そういうこと言われるの」ノックアウト寸前の私の後頭部に、妻は追い討ちをかけてくれた。「とくに電話で」そして、妻は静かに電話を切った。
なんて、なんてイヤな女だ。誰が、だーれがオマエなんかに電話してやるか。もう二度と、絶対二度と会わない。もう、これできっちり終わり。おッわッりッ!
「ワレーッ、ドシバキアゲタロカッ、このドアホッ!」切れた電話に向かって、何故か神戸弁に戻って、私は思いっきり叫んだ。空しかった。



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